※おことわり
このページは1990年代よりオーナーご家族が公開したページを再編集して掲載しております。
一部見辛い箇所、画像の荒い箇所などがありますが、当時の雰囲気を残すためそのままにしております。
ご了承の上ご覧ください。

軌道線 〜桜谷軽便鉄道の出発点〜

軌道線外観

軌道線は郊外の住宅団地「ときわ台」に建つ平凡な小住宅にあった桜谷軽便鉄道の最初の路線です。
大阪で偶然本物のレールが販売されているのを見つけ、徐々に拡大していきました。
1998年5月5日に全通し、南山線の開通により徐々に設備が撤去されていき、現在は普通の住宅になっています。
住宅のまわりに架線柱が立ち並び、門を入るとナローの線路がある。
わずか3mの線路と1両の手押しトロッコからスタートしたこの鉄道ですが、廃線直前には、軌道延長75m、家屋のまわりをぐるりと回るエンドレスでした。


軌道線情景

車輌はバッテリー機関車(BL)、ガソリン機関車(GL)、電気機関車(EL)、電車や客車、貨車など12両が在籍していました。
列車を運転するときは門扉を開け放します。すると軌道があらわれます。 架線は線路面からおよそ2メートルの高さに張られていますが、背の高い人ならば頭が接触しそう。もちろん電圧が低いので危険はありません。


軌道線情景

軌道線の日常業務は、手押し台車による物品の搬送です。
軌道が家屋の回りを一周していますので、重量物を運ぶのには大変便利です。
ビール、お酒はもちろん、材木やブロック、鉄製の部品などが到着すると、 トラックから台車に降ろしてもらい、所定位置まで搬送します。


軌道線情景

敷地面積は60坪。家屋の回りにはわずかの空間しかありませんでした。特に西側(勝手口付近)はガス給湯器・ゴミ箱などの脇をかすめるようでした。
家屋の四隅は急カーブですり抜けますが、まさに壁に接触せんばかりのきわどさ。それでも軌道系交通機関の強み、一度調整して通過できるようになればもう大丈夫。操縦ミスによる接触事故などは起こりません。
いずれにせよ 15インチ(381mm)ゲージだからこそできた軌道建設です。ちなみにカーブの最小半径は3mでした。



軌道線の詳細

2000年6月時点での軌道概要を紹介します。
レールは6Kg/m、軌間は381mm、軌道延長は本線約46m・側線約29m
側線の一部を除き、架空単線式の直流30V電化でした。


◆軌道は住宅を囲むようにエンドレス形状に敷設しています。
庭の南東隅が最後まで残った工事区間ですが、1998年5月5日に開通しました。
庭の東側を専用軌道で約10m進むと門扉付近に到達します。
門扉付近は鉄平石で舗装されており、路面軌道風になります。
玄関脇を過ぎるといくつかのスイッチ(転轍機)が見え、作業場となります。
この付近が本軌道を最初に敷いた地点で、「起点・0m」としています。
つき当りの窪地(凹地)には扇形のセクタープレート(車輌を入れ替える設備)があり、側線に接続しています。
凹地を大きくカーブした木橋で渡ると、勝手口へ続く併用軌道となります。
やがて専用軌道に戻り、5m程でまた分岐があります。以前は直進側のみですぐ終点でしたが、現在は左分岐側が本線です、半径3mのカーブで左へ90度まがると南庭へ出ます。
南庭には、デハ6号電車の車庫を兼ねた唯一の駅「桜谷駅」を設置しています。
桜谷駅を通過して進むとやがて露地にさしかかり、急なカーブで左に曲がると最初の地点に戻ります。



軌道の様子

東側の専用軌道

東側カーブ  東側軌道  東側軌道
約10mと短いが、木立の中を走る風情が軽便風である。

自動転轍機

自動転轍機(正位)  自動転轍機操作盤  自動転轍装置
約3mの有効長をもつ側線への分岐には自動転轍機を設置した。操作は玄関寄りの門柱に取り付けた操作盤から行う。
(列車が停まると人が通れなくなり、転轍は遠隔操作でしかできなくなるのだ!)

信号(正位)  信号(反位)
転轍機に連動した信号を設置。割り出しができない構造のポイントであるため、誤進入は即ち脱線事故となる。信号の確認は重要だ。

玄関を横切る

 
家の正面を堂々と横切る列車。アプローチ(門扉から玄関を結ぶ通路)との併用軌道になっている。

 
二階から眺めた併用軌道。鉄平石にグラインダーで溝を掘りレールを収めているが、相当な難工事区間であった。

作業場(検車線)

作業所への分岐   
玄関脇をぬけると側線が分岐し、作業場となっている。2線分を上屋で覆い、工作機械や道具類が所狭しと並べられている。
作業所へ入るためのスイッチ(転轍機)は2線分あるが、転鉄てこは簡易型であるため操作は少々重い。

変電設備

   
作業所内に設置したミニ変電所。家庭用電灯線AC100VをDC30Vに変換し、電車線に供給している。

   
変電所から電車線に接続する部分。低圧とはいえ絶縁はきっちり行わねばならない。架線を吊す碍子は市販品を使用。

転轍機

   
本線の分岐には、変形スタブ・スイッチ型転轍機を使用。トロッコ用の6キロレールとはいえ先端を尖らせるのは困難で、苦肉の策である。
転轍てこはローカル線や引き込線でよく見られる「だるま型転轍てこ」を採用。重りはスポーツ用品の「バーベル」である。

セクタープレート

  セクタープレート
扇型に配置された3本の線路を切り替える「セクタープレート」。留置線へ車両を入れる際に使用する。

西側の併用軌道

   
西側の併用軌道。ガス給湯器やポリペールの脇を抜け、バルコニーをくぐり、勝手口を過ぎると専用軌道となる。左へ分岐していくのが本線。

ガソリン機関車庫

 
西側線の突き当たり(直進側)には「ガソリン機関車4号機」の車庫がある。主庭からの景観に配慮して地味な色合いにした。

南側の軌道と桜谷駅

桜谷駅1  桜谷駅2 
半径3mのカーブで南庭に入ってきた軌道は、デハ6号電車の車庫を兼ねた「桜谷駅」に進入する。
桜谷駅を出ると、軌道の周囲に庭木が茂った緑のトンネルになった。この区間をガソリン機関車の牽く列車で通れば、ほのかに森林鉄道のイメージが浮かぶ。
写真右の奥手のカーブを抜ければ、東側の軌道に戻る。エンドレス路線である。


軌道線のおもひで



記念すべき動力車1号機、京都市電風3号機



門に顔を出した7号機、ビール運搬車



勝手口付近、門入って左の待避線付近の4号機



門入って左の待避線付近、極めて狭い旧桜谷駅ホームの新車デハ6と旧201



裏庭付近の新車デハ6、初の電気機関車は凸型 5号機



2000年4月まではトラバーサもありました。ターンテーブルも実用。



軌道線最後の様子/最後まで残ったデハ6による臨時運行


 

軌道線の歴史

1995年

8月 桜谷軽便鉄道初の車両「20号資材台車」製造。当時は桜谷軽便鉄道という名前もなかった。

1996年

11月 桜谷軽便鉄道初の動力車「1号バッテリー機関車」製造

1998年

5月5日 軌道線全通